NHKはじめ、東京キー局は、VTRの使用を遂にやめてしまいました。一部、番組では使用されていますが。代わりとして、XDCAMという、ブルーレイディスクを放送品質にしたものを使用しています。これは、いままでのVTRとは違う概念で、データとして記録します。現在、目にしているテレビは、XDCAMになっています。しかし、ソニーのVTR技術者の最後の意地というのか、最高のものを残しました。それが、HDCAM-SRという規格のビデオテープレコーダー(VTR)です。
これは、いままでハイビジョン放送で使われた、通常のHDCAMと違い、ビットレートが440Mbps(圧縮率1/2.7)という とんでもない高画質かつ、12chの音声を持っています。映像は、10bit。音声は、24bitです。いままでのHDCAMが、140Mbps(圧縮率1/7)で、デジタルにも関わらず圧縮の し過ぎで
3回のダビング(編集)が限度でした。 しかし、このHDCAM-SRは、ほぼ非圧縮同等の処理を行っているため、100回ダビング・編集をしても、オリジナルと変わりません。
時代は、4Kや8Kと言われていますが、放送は、当分(10年ぐらい)ハイビジョン画素のままです。4Kも確かにきれいですが、圧縮をかけすぎて、どれも、納得がいきません。
現に、4K放送が始まっていますが、あまりハイビジョン放送と変わらない品質です。それは、元の4K撮影時に、圧縮をかけすぎているからです。
HDCAM-SRは、ソニーが、最後の打ち上げ花火として、放送業界に約40年近く開発に携わった最後のVTRとして名を残すでしょう。 すでにVTRの生産が終わっていますが、このHDCAM-SRだけは、アーカイブなど含め、あと10年弱ぐらい残るのではないでしょうか?
<HDCAM-SRが良く使われている分野>
・ハリウッド映画のテレビ用原版
※世界的にテレシネ原版はHDCAM-SRがデファクト
・アニメ原版(ブルーレイディスクの原版はHDCAM-SR)
・コマーシャル原版
・音楽番組
・音楽ライブ
・ミュージックビデオ
・ドラマなど
撮影では、大河ドラマや、デジタルシネマ、コマーシャル、大型音楽番組、MV、ライブなど、最高画質を求める現場で今も使用されています(2019年現在)
また、HDCAM-SRで、RGB
4:4:4サンプリング記録されたSR素材を再生して、YPbPr 4:2:2の正確な放送信号に変換して出力することが可能。
※HDCAM(映像ビットレート=140Mbps、圧縮率1/7)
※HDCAM-SR(映像ビットレート=440Mbps、圧縮率1/2.7)
実は、通常のHDCAMでも、HDCAM-SRのデッキで再生すると、通常のHDWシリーズとは違って、かなりの高画質に変換されます。見た目も、一枚ベールが剥がれたような透明感が増します。
HDCAM-SRのデッキ(SRWシリーズ)は、再生時のデコード処理が違うためです。そのため放送局ではアーカイブ時に、HDCAM-SRのデッキを使って、HDCAMもアーカイブしています。 当社も同じように行っています。
(HDWシリーズは画質が悪い)
このように、家庭用も含め最後のVTRは、HDCAM-SRとなってしまいましたが、とてつもないVTRを開発したソニーに感謝したいと思う反面、もうこのような技術者の意地を見せるような、モノづくりができなくなってきていることに、時代なのか残念に思います。
当社も、HDCAM-SRをメモリー化した SRMASTERというものも使用し高画質制作に寄与しています。
■HDCAM再生でのVTRデッキの画質差
HDWシリーズは、開発も古くデコードチップの違いから、黄色矢印部分での画質劣化が目立ちますが、同じテープを、HDCAM-SR(SRWシリーズ)のデッキにかけると、そこまで酷くならずにデジタル化できます。
解説:ティーファイブプロジェクト